癌治療体験談 (前オーナーYukiの体験談)
私ごとですが、この度中咽頭癌の治療を行いました。私自身、治療に関して、知人やインターネットでたくさん情報を探し、とても参考になりました。どういう心構えで治療に望んだらいいのか、どんなアイテムが役立つのか、小さな情報もとても役に立ちました。
そこで、私も同じような立場に遭われた方に、少しでもお役に立てればと思い、私自身の闘病体験や便利だったアイテムなどを紹介したいと思います。放射線治療の時は46歳、抗がん治療の時は47歳、男性です。
1. はじめに
最初に癌があることがわかったのは、側頸嚢胞の手術をした後の細胞検査からでした。手術自体もすごくスムーズにいき、癌はないだろうと、お医者様も思っていたので、癌ウィルス(HPV+)があるとわかった時は、とてもショックでした。そこから僕の癌との戦いが始まります。
細胞検査からわかったのは、手術で取った腫瘍は原発巣ではなく、転移巣であったことから、僕の癌は、原発がどこにあるかわからないという「原発不明の中咽頭癌ステージ1〜2(ウィルス性癌はなんか腫瘍癌とはステージの判断の仕方が異なるようです)」と判断されました。お医者さんから言われた治療は抗がん剤(シスプラチン)と放射線治療。
しかし、その後のPET検査でも全く光っている部分もなく、他の検査でも異常がない状態、、、僕はそこで「これって健康診断であれば「異常なし」と判断されるやつだよね!?」と思ってしまいました。
そのようなマインドの僕に、「摘出した腫瘍」から癌ウィルスが出たから、「仕事を休業して(一人で経営しているので、もちろん何も保証や手当もありません)、抗がん剤治療と放射線治療を受けましょう!中咽頭癌は化学療法の治療成績も良いので!」というお医者さんの治療案はなかなか受け入れることができず、、、、
最後まで悩みに悩み、お医者さんを困らせた結果、放射線治療のみを受けることを選択しました。
でも、主治医の先生からも奥さんの知り合いのお医者さんからも「抗がん剤治療も受けた方がいい」と言われていたこともここに付記しておきます。。。そうです。僕は抗がん剤治療がとてーーーも怖かったのです。僕の場合、この後結局抗がん剤治療を受けることになりますが、放射線治療だけで大丈夫な方もおられるようです。でも、やはり素人判断しない、プロの判断に任せるのが最良かと思います。
2. 放射線治療について
放射線治療において最も自分にとって難関だったのは、放射線治療時につける「マスク」です。一言で言えば、それは「鉄仮面」。さらにその仮面をつけて台座に固定されるのが嫌でした。(鉄仮面姿の男性が台に固定されている姿をご想像ください)
自分は少し閉所恐怖症の部分があります。MRIも非常にしんどく、もう二度としたくありません。MRIの時点で「しんどい」と感じた人はもしかしたら、放射線のマスクも大変かもしれません。
嫌だ嫌だと放射線の先生を悩ました結果、特別に目と鼻と口に穴を開けたマスクを用意してくださいました。放射線というのは、狙ったところにピンポイントで当てないといけないため、台座に固定は絶対です。でも先生たちの配慮のおかげでなんとか最後までやり遂げることができました。
ちなみに看護師さんに、だんだんとマスクに慣れてくるよと声をかけてもらいましたが、すみません、、僕は全く慣れませんでした。放射線は合計33回当てました。
次に、放射線治療をこれから受ける方が気になるのは、味覚障害・唾液障害だと思います。僕の場合15回目以降に味覚がなくなりました。唾液もそのあたりからかなり出づらくなったと思います。
唾液が出ないと口がカラカラになるので、僕は常にブリタの浄水水筒fill & go (600ml)を持ち歩いていました。放射線治療の時の水分補給は大事なので、これは手放せないアイテムです。後に記述します、抗がん剤治療の時も非常に重宝して、2本使いをしています。
味覚がなくなると食欲もなくなります。でも食べなくなると最後まで戦えません。ですので、頑張って食事を取るようにしていました。奥さんが色々食べやすい料理を試してくれましたが、食べやすかったのは「卵かけごはん」です。
なんせ口に物を入れると「えぐみ」しかしなかったので、薬だと思って流し込むように卵かけごはんを食べていました。味覚がなくなる、食べ物を食べる喜びを失うということは想像以上にショックで、精神的にやられます。
そんな僕に奥さんはSwitchを買い与え、ドラクエで気を紛らわせる作戦を行いました。「そ、そんな子供騙しな!!」と思いましたが、意外と効果的でした(笑)。彼女の方が一枚上手です。
余談ですが、彼女は食事の準備がとても楽だったようです。でも僕のために新鮮な卵を養鶏場から買ってきたり、栄養価の高い卵をお取り寄せしてくれたりしました。(ありがたい!)
放射線治療の時、処方された緑のどろっとした飲み薬は、使うと乾燥が少し防げたかなと思います。あと、口の中を綺麗に保つのは非常に大切です。歯ブラシで歯茎を誤って傷つけないように、電動歯ブラシを使用しました。これも良かったと思います。後、髭剃りも肌への負担軽減のため、ぜひ電気髭剃りを使ってください。
放射線をあててる部分は、真っ赤になります。僕の場合は「真夏に首だけめっちゃ日焼けして、むしろ火傷レベル!」のような見た目でした。服がその部分に当たると痛かったです。これも病院から処方された塗り薬をしっかり塗りましたし、治療前の準備段階で保湿を心がけました。中には皮膚の部分がジクジクになる人もいるようです。皮膚の状態は個人差というより、治療時の年齢や何回放射線を当てるかが大きのかもしれません。
僕は抗がん剤治療を併用しなかったため、胃ろうをすることはなかったですが、抗がん剤治療でも副作用の口内炎で悩まされるので、併用する場合は胃ろうすることにはなると思います。
僕の場合、33回の放射線治療が終ってから、1ヶ月目あたりから味覚が戻り始め、1ヶ月半後には、ほぼ以前と同じぐらいまでに回復しました。急に味覚が戻ったのでびっくりしました。しかし、どれぐらいで戻るかに関しては個人差がとてもあるようですし、また僕は放射線治療だけだったので、回復も早かったのかもしれません。
あと、放射線治療時は46歳ですが、医療的には若いようで、それも好影響したかもしれません。世間ではおっさんですが、病院では若者です!唾液ですが、治療後1年近く経っても、60%ぐらいしか回復していません。普段あまり水分を取らない方はしんどいかもしれませんが、僕は昔から水分補給をかなりするタイプだったので、カラカラになる前に水分補給をして過ごすことに慣れ、ストレスはさほど感じません。
3. 抗がん剤治療について
放射線治療が終わって半年ぐらい経った時、再発と反対側にも転移が見られるということで、抗がん剤治療とリンパ郭清手術を受けることになりました。手術まで、2クール抗がん剤をしてという計画だったので、まずは抗がん剤治療についてお話しします。
本来中咽頭癌の場合、抗がん剤は「シスプラチン」を使うようで、こちらに関しては体がしんどくなるなどの副作用はあるようですが、脱毛はあまりないようです。放射線と組み合わせた抗がん治療の場合は、シスプラチンを使うとお聞きしました。しかし、僕の場合は、放射線治療が終わってから半年での再発、さらに転移も見られるということで、このような進行がんにはMAXで抗がん剤治療「シスプラチン+ドタキセル+5FU+吐き気どめ」を行った方がいいということになりました。
抗がん剤の中でもドセタキセルというのが、脱毛という副作用を起こすようです。抗がん剤治療のイメージとして、毎日抗がん剤を入れているイメージでしたが、シスプラチンとドタキセルは1日だけ入れて、5FUと吐き気どめは5日間連続で入れて、そしてお休み(←と言ってもすぐ家に帰れるわけではありません)という流れでした。抗がん剤を入れているときはとこまでしんどさは辛くないのですが、全ての抗がん剤が入り終わってからのお休みの時にドーンと体が重くなり、空気すら重く感じます。
しかし、1クール目はしんどいながらもまだ動ける状態でした。吐き気どめを入れながらご飯もなんとか食べれました。熱が出てしんどいのはありましたが、例えるとインフルエンザにかかっているような体の状態というのが近かったというのが僕の1クール目の感想です。もちろん1クール目もしんどかったのですが、2クール目が本当に大変だったので、思い出すと1クール目のしんどさが霞みます 笑
入院中は抜け毛もさほど気になる感じであったわけではなく、もしかして僕は脱毛しない??と思っていたのですが、1クール目が終わって、帰宅して2日後くらいから、頭を洗うと永遠に終わらない、つまりお湯と共にどんどん毛が流れていき、手に髪の毛がつかなくなることはない状態です。お風呂の髪の毛キャッチの部分も髪の毛で溢れていていました。
髪の毛が永遠に抜けるので、お風呂から奥さんを呼んだ時、奥さんはそれが衝撃だったのと同時に、この抜け毛で排水溝が溢れている様子を、僕がみるとかなりショックを受けるのではないかと思い、「とりあえずこのタオルは捨てていいから、髪の毛を拭いて乾かそう」と言ってくれました。そして、僕が髪の毛を拭いている間に、さささっと抜け毛を処分してくれました。髪の毛はもちろんタオルにもたくさんつきます。
坊主にしてから抗がん剤治療もできたのですが、むしろ短い方がパラパラと短い毛が落ちて掃除が大変だろうかと思ったので、僕は何もしませんでした(というか治療をすることがまだそんな前向きに受け止められていなかったというのもあります)。でも、衛生面から髪の毛をスキンヘッドにしてから治療をされる方も多いようです。個人的には結局は抜けてしまうので、治療の受ける本人が気持ちが楽な方を選ぶと良いと思います。何もしなかった僕も3日ぐらいでほとんど髪の毛(眉毛、まつ毛、体毛)は抜けてしまいました。
髪の毛が抜けたら帽子生活になるのですが、帽子が肌に直に触れるので、おしゃれな毛糸の帽子より、肌に優しい素材のものを選ぶと良いと思います。2、3個買ってそれらを洗いながら順番に使っていきました。あと、入院する前にお客様から明るいカラーの前開きのパジャマをいただきました。これはとても嬉しかったですし、いろんな意味で助かりました。
抗がん剤治療入院中は、パジャマは最低でも4つぐらい必要で、また病院では前開きのパジャマでないといけないので、これを揃えるのでも結構な出費になります。ユニクロなどではレディースでは前開きがあったりするのですが、メンズとなると被りタイプのパジャマが多く、イオンやしまむらで手頃なパジャマを探しましたが、セールになっててもやっぱり1セット3000円ぐらいはするのです。なのでパジャマの差し入れは本当に有り難かったです。さらに、そのお客様は入院中はただでさえ心が暗くなるからと言って赤のストライプの入ったパジャマを選んでくださって、本当にそのパジャマを着るたびに心が明るくなり、とても励まされ、精神的な面でも助けていただきました。
もしご家族やお友達に抗がん剤治療で入院されるということで、何か贈り物をしたいということであれば、「パジャマ」「靴下(温かいもの」「レッグウォーマー」、冬であれば「電気ひざかけ」、美味しいお湯を注ぐだけの即席味噌汁や煮麺、がおすすめです。暇つぶしに漫画や本を差し入れに.... なども治療が進むにつれて、目の焦点が定まらず、字を読むことでさえままならないので、ちょっと厳しいかと思います。抗がん剤治療はまさに命をかけて癌と闘う治療だなと思います。ドラマで抗がん治療の患者さんとか出てたりしてますが、全然そんな、あんなもんじゃありません。あれの100倍大変です。ですので、もしLINEも既読だけでOKとしてあげてください。
さて、2クール目です。もう自分の記憶から消したいぐらいですが、とてつもなくしんどかったです。先ほどにも書いたように、抗がん剤が入っている時よりも、抗がん剤が全て入り終わった5日目からが本当に大変です。トイレに行くのさえもすごく大変で、部屋の中にトイレがあったのですが、トイレに行って自分のベットに戻ってくるまで10分ぐらいかかっているような体感でした。
ご飯も食べられないのですが、看護婦さんから「食べれないと家には帰れないよ」と言われ、頑張って煮麺を1/3や半分食べたり、食べれなかったりでした。ご飯の匂いもしんどくて、看護婦さんが煮麺より素麺みたいな冷たい方が食べやすいかな?など色々提案してくれてありがたかったです。
2クール目は体力も体重もかなり落ちました。免疫力が底になるぐらい下がっているのと、時期が12月ということもあって、とにかく寒くて寒くて、途中で奥さんに電気毛布と電気ひざかけを持ってきてもらいました。病院は新しくきれいなところなので、すきま風があったわけではありません。また暖房をつけることもできるのですが、部屋が乾燥すると口の中にカビ(菌)が増殖してしまいます。
じゃあ、ここで加湿器の出番!となるのですが、加湿器はかなりこまめに手入れをしなければ、逆に菌製造機と化してしまいます。実際、僕の入院していた病院では部屋に加湿器を置く場合は、毎日手入れをして100%乾燥させてからじゃないと次の日使えないシステムになっていました。
トイレに行く体力すらない僕にそれが到底できるはずもないわけで、僕は部屋の暖房は極力控えて、電気毛布などで体を温めるようにしていました。抗がん剤治療中は口腔ケア(歯磨き、舌磨き、うがい)がとても重要です。というのも治療中は、外から入ってくる菌と戦ってくれる白血球が抗がん剤でほぼ死滅させられてしまうので、白血球値が復活してくるまで、いかに自分自身でで菌の侵入を防ぐかが大切になってくるのです。
抗がん剤治療はまさに「毒を持って毒を制す」というような治療法で、がん細胞も殺す一方正常な細胞一旦殺してしまうというイメージです。この辛さは体験した人にしか分からず、体もしんどいし、癌という病気で心も不安で、まさに身も心もボロボロになります。そんな命懸けの戦い(やらな、やられる、という感じ)で僕は、家族がいる、お客さんがいる、帰る場所があるということが心の支えでした、という言葉は聞こえがいいですが、リアルはもっと泥臭いです 笑
また、気になる脱毛後の髪の毛がどれくらいで生えるかということですが、手術も含めて全ての治療が終わったのが2月。3月、4月中旬までなかなか生えないなぁと思っていましたが、4月中旬ぐらいからあれ?生えてきてる?というところから始まり6月には男性の短髪完成!という感じになっていました。5月すぎから帽子もかぶっていなかったです。女性の場合はベリーベリーショートという感じでしょうか。主治医の先生にも大体半年ぐらいで髪の毛は気にならなくなってくると思いますと言われましたが、本当にそれぐらいです。なんか急にどっと生えてくる感じでした。もし抗がん剤治療前・中・後で脱毛で気にされている方は、大丈夫です。生えてきますので、心配せずに気長に待っていてください。
抗がん治療中はお店を長らくお休みしました。お客さまには大変ご迷惑をお掛けしたにも関わらず、皆さんに励ましの言葉をたくさんいただいて本当に感謝の言葉もありません。本当にありがとうございました。